2016年8月10日水曜日

日本海軍最後の感謝状

感謝状海軍省から電話があり、厚木事件の作業代金を支払うといってきた。

呼ばれた場所では目下重要な会議中だという。安藤は内心、「ふざけるな、人を呼んでおいて会議中もないもんだ、またやられたか」 と不機嫌にその場所へ赴いた。

構わず会議室に入ってみると上座に偉そうな人が立っている。
ちょうど二人の目が合ったが、その方はこちらを見てニコっと笑みをしてくれた。
佐藤大佐はその方に最敬礼をして安藤を押し戻して部屋を出てくると、

「このたびは本当にありがとう」と再開の握手を交わすと
「この方は高松宮様だ。お話しを頂いているのだ」と言う。
なるほど写真で見たことのある方だと分かった。

実はこれが安藤にとって高松宮との初対面であるが、このあと運命が二人を結びつけることになろうとは分からないものである。

佐藤大佐は、米内海軍大臣の英断で例の工事代金500万円を支払うと言うのだ。
そして大臣の秘書官の庵原大佐に面会すると、
安藤さん、少し負けてくれませんか」と言う。
「ええーいいでしょう。海軍も大変でしょうから半額に負けておきます」と。
半ばあきらめていたのだからと、大見栄を切ってしまった。
そして感謝状と共に250万円を頂いたのである。
この出費は戦後処理第一号として出費されたのである・。

日本海軍最後の感謝状であり、安藤家の唯一の宝であるが、安藤は「真珠湾攻撃にも勝るとも劣らない功績であった」と言葉を添えられて頂いた。(平成18年当時の換算で、250万円は約5億円-に相当する金額である)

感謝状:

「終戦時連合軍の進駐に際し厚木飛行場急速整備に付多大の障碍を克服し短時日に之を完成したる異常の努力に対し茲に感謝の意を表す」

昭和20年8月26日
海軍省軍務局長海軍中将保科善四郎
株式会社大安組殿