夕暮れと共に雨が降り出す。ヘッドライトに映し出されてきた暗闇の滑走路には、数え切れない飛行機の残骸が四散されている。
安藤の仕事感はいつでも鋭い。
「佐藤大佐、これは大変ですね」
(安藤の感は、この残骸を撤去するのはどうするんだ。これはいい仕事になるんだが・・)と、心でつぶやいた。
「そうだ、これは大変な仕事だ。それよりも前に小薗がどうなっているか?こいつをを方付けなければならない、安藤さん一緒に来てくれないか」
厚木飛行場
基地内は兵隊の数も少なく閑散としている。
庁舎の前で一人の士官を見つけて
「おい、そこにいるのは小長谷君じゃないか。どうなっているんだ。馬鹿に静かだが」
「佐藤大佐ご無事でしたか。実は今基地の隊員を大勢送り出したところです。ところで大佐はどうしてここへ来られたのでありますか」
「俺はな、山澄大佐の補佐官として今着任するところだ。これから厚木航空隊の小園大佐に会いに行くんだ。君案内してくれ」
車に3人が乗り、雨でるかるだ基地のなかの不気味に暗くなった道を進む。本庁舎前に到着。緊張高まる佐藤は、小長谷参謀の案内で山澄大佐と面会した。
直ちに委員長の有末中将を紹介され、
「私は海軍本部長の命令で厚木基地の整備にまいりました」と報告。
「ああご苦労さん。シッカリ頼む」
「ご紹介します。私をここまで送ってきてくれた安藤さんといいます。軍の特別顧問をしていて、私の中島飛行場の緊急整備をやってもらったりしています。信頼できる男ですからご心配なく」
安藤は無言で会釈して一歩下がって席に着く。
安藤は事業家として修羅場をくぐってきた貫禄があたりを威圧する。
有末中将も安心したのかタバコをつけて一服し
「ところで小園司令はどうしていますか」
これは佐藤の主任務である。
「うん、小園たちは、別の部屋に陣取って盛んに意気まいている」
(防空壕に反乱兵らが立てこもる)
苦々しい顔をして佐藤を近くに呼びよせ、
一気にまくし立てる。
「実はな、いろいろやったが手が無い。司令を如何に始末するか・・」
「司令の周りには、強行分子が取り巻いている」
「下手に手を出すと、取り巻きまでが騒ぎ出す」
「その上滑走路には飛行機の残骸をバラまいてある」
「やつらはもうやけっぱちになっているんだ」
「下手なことをすると騒ぎが大きくなって手がつけられなくなる」
「高松宮殿下もご説得の電話を直接頂いたが効果が無い。軍医が来ていて小園の身柄を引き取りたいとは言っているが、事態は動かない・・」
と一気に状況を説明した。
佐藤六郎大佐は、
「小園司令とは同期の桜で、なんども同じ基地で働いてきました。私にこの始末を下命されたのには小園とのこのような関係からです」
「そうか。頼りにしている。小園はガンとして動こうとはっしていない。見ただろうが、滑走路には壊した飛行機が散乱している」
有末中将の話を聞いて佐藤は、
「はい、安藤さんとも現場をみてきました。とんでもない惨状です」
「佐藤君この飛行機を片つけるのは大変だぞ。下手に手を出すと撃ち合いが始まる。彼らは狂乱状態だ。やけくそになったいる」
「小園の狙いは反乱軍を大々的に組織して、米軍相手に徹底抗戦を狙っていたんだ」
「クーデターですか」
佐藤の問いに答えた
「そうだ。彼の声明文を読んだろう」