総司令部(GHQ)への手がかりを得た安藤は、吉田外務大臣の回想記にあるように陛下が自発的にマ元帥を訪ねたいとのご意向を、同時に高松宮から松前博士を通じて安藤にもGHQへの手がかりを探るよう要請されていた。
マ元帥の側近のフェラーズ将軍との交流から彼の心情が親日的である事を知った安藤は、フィッシャー大尉とも相談し、この際一気に「頂上会談」の実現をめざして、マ元帥に直訴する決断をし、フェラーズ将軍を訪ねた。
安藤の手記には、
「私は率直に”マッカサー元帥と天皇陛下との会見”を申し込んでみた。将軍は直ぐに元帥のところ行き、30分ほどで戻ってきた」とある。
「私は胸の高鳴りを押さえながら将軍の返事を聞いた」
将軍は、
「マッカサー元帥曰く、本来なら元帥が宮廷を訪問して、天皇と親しく話し合うのが礼儀だが、今の元帥の立場は、連合軍の総司令官として他国への思惑もあり、こちらから訪問することは出来ない。しかし万一、天皇が来て頂ければお会いする」
なんと案ずるより産むが安しと、安藤はマ元帥の快諾を得ることに成功したのである。
日本政府としては天皇のご意向があるからといって、吉田外相の言葉の通り、敵に塩を売ることになっては天皇のお命に関わることにもなり、軽々には実現できず躊躇せざるを得なかったであろう。
そこにいくと安藤は民間人であり、水面下でマ元帥の意向を打診することの出きる立場が結果において日本政府の責任問題にならず、アメリカ日本双方にとって都合の良い運びとなっていったのである。
安藤はこの奇跡的結果をもって、すぐさま高松宮邸に参上し、宮殿下にご報告をした。