2016年8月11日木曜日

厚木へ集結


8月25日正午過ぎ、
朝から大安組の作業員は動き出し厚木に集結を始めた。

安藤は佐藤との約束を期待しながらもあてにはせず、親様の「安藤さんやれ!あんたなら出きる。日本を救うのだ」この言葉に自信が出て暗示されたように全員集合を号令した。

総勢250人ほだがトラックに分乗し、トレーラー、トラクターを従え、全員の集合は午後4時を回っていた。

安藤は(よくも一日でこれほど集まったものだ) と決戦を前にした武将のように、満足そうに部下を見回り、幹部と戦略会議を開いた。

まず幹部らと現場の視察だ。昨晩は暗くて分からなかったが驚いた。

「なんだこれは。ひどいな。壊されていて容易に動かせないな」
滑走路には道路渋滞のようにびっしりと飛行機の残骸が投げ出されている。

昨日までは日本の誇る戦闘機、零戦、月光。爆撃機の彗星、銀河などがおよそ300機ほどあるだろう。それが反乱軍により機体を壊され、足が取られて傾いている。爆撃機はタイヤがパンクされている。尾翼を天に向けて前のめりになっているもの、翼が取られてものなど、かっては日本の空は守ってきた精鋭機までもが、無残な地獄絵を見せている。



安藤は自分の身が切られるようにこの醜態に痛みを感じて、思わず合掌した。彼らこそわが子を悼みように心を鬼にして傷心のうちにやったことだろう。

「こりゃーひどい。えらいものを引き受けてしまった」と、内心、しまった。
と思ったが口には出さなかった。

---------- 反乱軍 ---------------

 唖然としているところへ、反乱兵の一団が寄ってきた。
「貴様ら、何しに来た。責任者を出せ」

「海軍司令部の命令でここを片づけに着たんだ」
安藤が一歩前に出て答えた。

「貴様がボスか。そんなことはさせぬぞ!直ぐに引き上げろ。さもないとぶっ殺すぞ!」

安藤はむか!ときてこの野郎と向っていくところだが、
じっと我慢して

「兵隊さん分かりました。作業はしません。佐藤大佐がじきに来る筈ですからそれまで待たせてもらいます」と、何度も何度も頭を下げてなだめた。

(ちきしょう!てめいがたれた糞の始末をやらされるんだぞ)と、
ここでこれを言ったらお終いだと口をふさいだ。

作業は開始出来なくなっている。

「佐藤さんは遅いな。約束は金を受取ってからだ」
雨が次第に本降りになってくる。あたりは暗くなってくる。

「熊野。どうせ夜通しの仕事だ。班を組んで段取りをつけておけ」
「はい。社長、分かっています。夜中の作業は大変です。暗がりでは出来ません。明かりを使いたいがいでしょうか」

「あまり派手には出来ないだろうが、控えめにしてくれ。あいつらを刺激したくない。又向ってこられちゃ仕事にならない。佐藤大佐をまつんだ」