2016年8月11日木曜日

小園との酒宴

「ともかく、ただ今から現場を見てまいります」
と、言って佐藤は安藤を伴ってその場を引き下がった。

別室で待機していた山澄大佐に
「ところで司令はどこにいるのか」
「今、伝令が帰ってきます。そこで様子を聞いてみましょう」
やがて伝令から小園は奥の兵舎に居ることがわかった。

佐藤は秘策を練っていいて、安藤に協力を頼む。
「よし、佐藤大佐の骨を拾う約束をしたんだから、私も反乱軍に合ってみよう」と、腹を決めた。

安藤のこんな時の決断は多くの修羅場をくぐってきてだけに度胸が据わっている。
他人に頼まれると、
(頼まれましたとニッコリ笑い、ポンと叩いたこの胸は、金と銀との音がする)
安藤の18番である。

安藤の車で兵舎にむかう。
車中で佐藤が口にした秘策は、
「先ずは小園を酔わせる。安藤さんうまく酌をしてほしい。その上でこれを使う」
これとはなにか?

佐藤は兵舎に入り、案内された場所は奥の小講堂の中であった。

小園を中心に将兵たちが2~30人、円座を組んでいる。

佐藤の敬礼に彼らは立ち上がらうともせず、その場で軽く敬礼をする。まるで葬式の晩のように不気味な空気があたりを覆う。

「小園司令、久しぶりだな。元気そうでなによりだ」
「貴様も元気か?・・」
怪訝そうな顔をしながら、(こいつもまた回し物だな)と勘ぐっている。

「ところで何しにきたんだ」
再開を喜ぶどころか、警戒心をあらわにして、鷲のような鋭い目でにらみつけてくる。

歴戦の勇者だ。どんなに死線をくぐって敵と闘って来た事か。
零戦を乗っては鬼才を現して多くの戦果を挙げた英雄なのだ。
彼の発明したななめ銃で何機もの米軍の爆撃機を打ち落としたことか。
心は凛として澄んでいる。
時代が彼を反逆者と決め付けているだけで、本来ならば彼も英雄として顕彰されるべき立場なのだ。

ただ今ここに居る小園は、志半ばにして反乱の機運が実らず、功を失って意気あに!消沈しているのか、多くの将兵とやけ酒を飲んでいる。

頑健そうな丸顔に広い額、きりりとした高い鼻筋、プロペラ髭が威厳を顕しているが、よく見ると無精ひげも目に付く。

円座を組んでいる将兵の中央に小園はどしっりとあぐらを組んで座「ここに座ってもい一かな」と、佐藤が話しを向けて
「紹介したい。この人は民間人で、軍の輸送事業などを広くんだ。それに軍の顧問もやっいる。ちょうど車が手配できず安藤さんの車を借りて一緒にきたんだ」


小園はじろ・・と安藤を見て、紅顔でどっしりした体格と自信ありげな面魂に、
(これはただ者ではないな)と直感する。



安藤は軽く一礼して席に着く。
小園の発する威圧感にさすがは歴戦の猛者だと感じて、(これの始末は一筋縄ではいかないな)と、早速、持ってきた一升瓶を取りに立ち上がり、入り口で運転手の手塚を呼びトランクの酒を運び出した。

「やー皆さん。しめっぽいのは止めてどうですか、皆さんの労に答えて運んできたんです。お通夜の晩みたいでなんですか。ぐーといっぱいやりましょう」

一升瓶が配られて、
円座を組んでいる将兵の中央に小園はどしっりとあぐらを組んで座
「ここに座ってもい一かな」と、佐藤が話しを向け

「紹介したい。この人は民間人で、軍の輸送事業などを広くんだ。それに軍の顧問もやっいる。ちょうど車が手配できず安藤さんの車を借りて一緒にきたんだ」
小園はじろ・・と安藤を見て、紅顔でどっしりした体格と自信ありげな面魂に、
これはただ者ではないと感ずる。

安藤は軽く一礼して席に着く。
小園の発する威圧感にさすがは歴戦の猛者だと感じて、(これの始末は一筋縄ではいかないな)と、早速、持ってきた一升瓶を取りに立ち上がり、入り口で運転手の手塚を呼びトランクの酒を運び出した。

「やー皆さん。しめっぽいのは止めてどうですか、皆さんの労に答えて運んできたんです。お通夜の晩みたいでなんですか。ぐーといっぱいやりましょう」
一升瓶が配られて、

「司令、いかがですか上等の酒です。どうぞ遠慮なくやってください」と、
つかつかと小園の前に出て、コップを持たせて酌をする。
「さー皆さん一緒にやりやしょう」と杯を上げて音頭をとる。

安藤は宴会にはめっぽう自信があった。
日ごろ安藤は「宴会商法」とでも言う独特の才能を育ててきた。

「さー。いっちょう歌いましょうや」と、
18番の淡海節である。

船を引き上げ船頭衆は帰る、後に残るのは櫓とかいー。波の音よいしょこしょうー・・


佐藤と安藤は小園を挟んで席に着き二人で盛んに酌をする・・・